派遣から5年ぶりの正社員へ?!

マイクロソフトユニバーシティは大変盛況で、当初、WindowsNTのバージョンが3.5に上がったあたりから自分が研修を頻繁に担当する様になったのですが、これが4.0になったころには、担当する研修の殆どがWindows関連で占められるようになったのと同時に、受講者の指向にも変化が感じられるようになりました。
それまでは、研修を通してはじめて製品に触れ、製品がどんな機能を持ち、具体的にどのような活用が出来るのか、という、どちらかというと調査の一環として受講をする方が多かったのですが、WindowsNT4.0の研修が始まる頃には以下の指向を持つ受講者が増加しました。

MCP受験の対策として機能を一通り学びたい

WindowsNTが企業向けのシステムとして導入が進むにつれ、MCP資格取得のためにSI企業の一部門を丸ごと対象にした研修の引き合いが増加しました。

このような指向を持った受講者の目的は「MCPの取得」であり、最短でそのゴールへ向かうことが是とされ、おのずと研修内容もいわゆる「受験対策」的に試験のポイントとなるような事項をトレースすることに、最大限の時間を割くような進め方となりました。

具体的には、正規のカリキュラムを参考に、デモンストレーションやトレーニング、テキストに記載されていないような背景説明を割愛することで、正規のカリキュラムでは5日間を要するところ、3日で終わらせるようなカスタマイズカリキュラムを提供していたのでした。

当然正規のカリキュラムでの受講を認められる様な体裁にはなっていないのですが、これが下手をすると正規のカリキュラムより受けが良いくらいの引き合いが殺到し、自分が担当する研修においても、派遣先の研修会場だけではなく、受講を希望をされる企業まで出向いての出張研修も頻繁に発生し、新人研修と同様、よく全国行脚※をしておりました。

※この時出張先で阪神・淡路大震災の影響を被りました(幸い怪我等は全くありませんでした)。その時の出来事は、また別に書き起こします。


■製品に対して既に一定以上の知見があり、実業務で直面している課題を解決したい

上記とは対照的に、製品を使いこなす・または売るために奥深い知識を必要とする企業からの引き合いも、「MCPの取得」を目的とした受講者ほどではないもののジワジワ増加していました。

このようなニーズを持つ受講者は、個別機能に関してインストラクターより詳しいことがままあり、(インストラクター失格なのですが)受講者より教えられることも多々ありました。

例えば、
WindowsNTドメイン設計において、遠隔拠点の構成を以下の2点で検討している。どちらが適切か?

  1. プライマリドメインコントローラーを本部拠点に設置し、一部のバックアップドメインコントローラーを遠隔地に設置
  2. プライマリドメインコントローラーを各拠点に設置し、拠点間を信頼関係接続を設定
※上記は、どちらか一方が正解ということではなく、例えば拠点間の帯域はどの程度確保することができるのか、またドメイン管理を集中/分散のどちらを選択するのが導入企業の体制等から望ましいのか、等の要因により最適解は異なってきます。


なんて言う質問が来ると、一応Microsoftからガイドラインは出ているものの、当時は研修テキストと研修環境を超える知識がなく、「ぐぬぬ」と詰まってしまうことがままありました。

また、SQL Serverにおいても、キャパシティやIndexメンテナンスに関する実務上の質問が来たりすると、同様に受講者と同条件でのDB環境の構築や継続的な運用を経験したことがない為、ガイドラインの範疇に収まる一般的な説明をするのが限界でした。

それまで担当していたアセンブラC言語においては、少なからず現場での経験があったため、ある程度テキストの範疇を超える対応も出来たのですが、それが出来ないことで、チキンな自分はこれまでインストラクター業を営む上での自信がぐらぐら揺らぐのでした。

時間の経過に伴い上記の傾向が一層進む中、ありがたいことに派遣先の幹部社員の方から「社員にならないか」とお誘いを頂きました。
が、しかし、当時の自分は上記の傾向の変化に対し、今後どのように身を振っていくか悩んでいる最中だったので、すぐには気の良い返事をすることが出来ませんでした。


以下が、当時考えられる道でした。
1.このまま、より「受験対策」的な方向に特化した引き合いの流れに乗っかって、インストラクターを務めあげる。実業務を経験しないと体得が難しいノウハウの取得は、可能な範囲に留める。

メリット:
社員の誘いを受けていることもあり、苦労せずとも安定した職を得られる。

デメリット:
先々今と同じ悩みで転職したくなっても、今より条件が厳しくなる。例えば30過ぎで、いくらMCP資格を所持していたとしても現場未経験のおっさんを誰が臨んで採用するか考えれば自明の理。

2.一旦PCインストラクターを止めて現場に出て、実業務を経験しないと体得が難しいノウハウの取得に努める。

メリット:
新しい業務へのチャレンジはタイミングが良い。20代後半という年齢的から考えると、チャレンジが遅れれば遅れるだけ不利になる。

デメリット:
臨む職場が見つかるか否かは、やってみないとわからない。正社員になることで、かえって年収がダウンする可能性もあり得る。

実は、セミナーが盛況で出張や残業等が頻発していたこともあり、当時年収が600万近くに達しておりました。それに比べ自分の職歴の背景が、低学歴でかつ職歴の半分以上が派遣では、いくらMCPを所持していたとしても派遣社員の収入を超えることが難しいことは、容易に想像が出来ました。

さて、当時の自分はどの選択をしたのでしょう…

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