PCインストラクターのお仕事 【その3】マイクロソフトユニバーシティ

PCインストラクター稼業に就いてから、インテルワークショップ、新人教育と講義の幅を順に広げて来ましたが、時代の流れに伴い、数年後には担当する講義もすっかり様変わりしていました。

まず、Windows3.0のリリースあたりから、インテルワークショップの引き合いが徐々に減りだしていたとの事で、自分がこの派遣先で仕事を始めるあたりでは、元々担当していたインストラクターをWindows系の研修に割り当てたいという意図から、引き継ぎが出来る人材を捜していたとの事でした。
更にDOS/VWindows3.1のリリースでこの流れが決定的になり、インテルワークショップの定期開催は4半期に1回程度に収斂して行く一方で、Windows関連の研修の引き合いが爆発し、自分もまずはC言語の経験があるということで、Windowsの開発入門から担当を始めました。

しかしこの研修、一応受講条件にC言語での開発経験をうたうものの、「入門」という言葉が真っ赤な嘘に聞こえるほど難易度が高く、この派遣先にいた5年の間で習得するにしろ講義するにしろ最も苦労をさせられました。
研修内容として、5日間で簡単なMDIテキストエディタを作るまで何とか持っていかなければならないのですが、何しろ当時はMFCVisualBasic等の便利な環境は皆無で、何かするにはひたすらWindowsAPIを直叩きしなければならず、画面上でまともなプログラムの実行結果を確認するのに3日目までかかってしまうという代物でした。

アセンブラC言語の講義では、1日目に自分が書いたコードに対するそれなりのレスポンスが確認出来るような流れになっていたので、受講者もそれなりに興味を持って受講出来たのでしょうが、一方でこのWindows開発「入門」では、3日目までひたすらデバッガ上でAPIの挙動確認しか出来ず、受講する方もテンションを保つのがかなり難しかったのではないかと思います(あきらめて爆睡している人も多かったような)。
そもそも1日目に、いきなりメッセージループノンプリエンティブマルチタスクの話など、Windowsの流儀を頭に叩き込んだ上でコードを書かなければならないのは、それまでMS-DOS等の基本シーケンシャルなコードしか書いた事の無かった人には、かなりハードルが高かったのではないかと・・・

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その後WindowsNTなる、OS/2を取って喰ってしまったOSの登場で、開発セミナを更に上回る勢いでシステム管理系研修の引き合いが増加し、これにあわせて派遣先の会社が「マイクロソフトユニバーシティ」の開催企業となったことで、自分もそのまま横にスライドする形で開発兼Windowsシスアド系の講義をアサインされ、最終的にはSQL Serverや、Exchange Serverなどのサーバー製品まで担当するに至りました。

この過程で自分にとてもラッキーだったのが、MCPプログラムの開始でした。これはマイクロソフト公認の技術認定資格制度の事で、類似するものではOracle社のOracle Masterや、CISCO社のCisco Certificationが有名ですね。
そもそもこの資格は現場のエンジニア向けのものですが、なんとインストラクターも資格を取得しないと講義しちゃダメという話になり、慌てて派遣先の事業部全員で担当別の資格を取得するのに血眼になっていたのですが、自分も派遣社員であるのに関わらず、派遣先会社の費用負担で、講義に必要な資格を一式取得させて頂いたのでした。
おかげで、その後の転職では、取得資格に助けられる局面が多々ありました。

サーバー製品の研修では、特にSQL Serverの講義が好きでした。自分はMS-Accessがはじめて触れたデータベース製品で、コードを書かなくてもデータを読んだり書いたりソート出来たりする事にえらく感動したのですが、SQL Serverで触れたいわゆる「SQL」に、アセンブラに近いシンプルさと奥深さを感じ、またデータベースサービスとして実装されるトランザクション処理やIO処理の概念も、今まで自分のコンピュータに対するイメージに含まれていなかったことから、「アセンブラC言語以外に、こういう世界もあるんだなぁ」と素直に感動し、PCインストラクターとしてではなく、一エンジニアとしてデータベース製品にズブズブはまっていきました。

そしてこの体験が、その後の転職のきっかけになるのでした。


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