あなたは自分をIT土方と思いますか?「King of IT土方」になりたくない人へ【加筆修正有り】

今回は、以前投稿した「しかし実態はIT土方」の内容を掘り下げて、「IT土方」について考えてみたいと思います。


■IT土方の定義

まずは「IT土方」でググるとヒットする、こちらの「やるお」シリーズでは、主人公が多重派遣の末に導入テストを担当するセクションに配属され、昼夜問わずひたすらテストをしている様が見て取れます。実話ベースだけあって、ものすごい臨場感に立ちくらみがするほどです。
「やるお」シリーズの中の人は、後編を見ると「IT土方」状態を脱しているようですね。

また自分が投稿した「しかし実態はIT土方」でも、動体視力に依存するシステム稼働監視と、運動神経に依存するトラブル対応が嫌で嫌で仕方が無かった事を書いており、双方共「仕事の内容が単純労働」で、かつ「長時間拘束される」事が共通しています。

wikipediaにも「デジタル土方」という該当事項が有りました。
概要をみると、「IT産業は華やかなイメージとは裏腹に、実際の労働環境は地味で単調で長時間に及ぶケースが多く、また、元請企業が下請企業に仕事を丸投げするゼネコンに似た産業構造になっているほか、多重派遣や偽装請負が頻繁に行われており、この構造によりIT業界が成り立たっていることから、デジタル土方、IT土方あるいはコンピュータ土木作業員と表現されるようになった。」とあります。



■ITの仕事はもれなくIT土方?

ここまで読むと、大概の人は「ITの仕事はろくでもない」と思われるでしょう。ちょっと昔になりますが、@ITに記載されていたこちらの記事でも、けちょんけちょんにされています。


これらの実態は、IT業界の一面を如実に表していると言えます。しかし、あくまでも「一面」にしかすぎません。

実際には、ITに限らずどんな職種でも、ルーチンワークとしてこなさなければならない単純労働は少なからず発生するもので、これをゼロにする事は困難です(なので、例によってwikipediaの説明はかなり偏っているように思えます)。

例えば、製造業における工場でのライン工なども、IT土方と同じような観点でメディアに取り上げられたりする事が良く有りますが、工場はライン工だけで回っている訳ではありません。ラインの設計から製造された商品の品質管理まで、多様な人員が関与しています。
また逆に、(最近でこそ求人は減っていると思いますが)営業部署に営業補助(ほぼ雑務と思われる)の派遣求人を良く見かけましたし、またバックオフィスでも、伝票入力専門の派遣求人は今でもよく見かけます。

ですから、もし自分が「IT土方」だと思っているのであれば、それは「IT業界」や「多重派遣」「偽装請負」等の環境要因「だけ」ではなく、そもそも主要業務が「単純労働」である事自体も問題なのです。また「単純労働」で有るが故に代替が効き易いことから、過当競争に晒され易く、労働環境や待遇の悪化に巻き込まれ易いと考えられます。

よって、「IT業界」や「多重派遣」「偽装請負」等の環境要因のせいにしてしていても「IT土方」を脱することは困難と思われます。先に例示した「やるお」シリーズで、後編で主人公がテスト部隊の取り纏めを依頼されていたように、「この人にだったら仕事を任す事が出来る」と評価されるよう、日々の実績をつみあげて行く事が、「IT土方」を脱する為の早道となるわけです。



■IT土方から脱する為に

ここまでのお話は、少し考えれば誰でも思いつく内容だと思いますが、問題は「IT土方」を脱する為のがんばり方です。自分は、がんばり方を間違えて、「がんばっているのにいつまでたってもIT土方のまま」という寂しい事になっている人たちを見て来ていますので、いくつか例を挙げて「どんな風に間違えてしまうのか」を書いて行きます。


■仕事そっちのけで資格取得やスキルアップに精を出す
「スクールに通ってスキルアップ」だとか「資格を取得してレベルアップ」と言う話を良く聞きますが、自身が関わっている仕事で成果を出す為の一助となるようなものでないと、意味が有りません。下手をすると、その時間を自身の仕事で成果を出す為に投資する方が効果が高いケースもままあると考えられます。

仕事で成果を出す為に不足するスキルがあれば、スキルが有る人に教えをこうたり直接依頼してしまう方が、自分でスキルをつけるより速く成果を出す事が出来る事も有るのではないでしょうか。無論、同じ成果であればスピードが速い方が高く評価されます。

また、転職時の面接等で「スキル/資格」と「業務実績(経歴)」のどちらを大切にするか、と聞かれれば、採用担当者は「業務実績(経歴)」を重要視するケースが殆どだと考えられます。

■そもそも「IT土方しかいない」組織に所属している
「IT土方しかいない」組織に所属していると、もし「IT土方」としての請負業務の範疇を超えて成果を出す事が出来たとしても、組織からはIT土方としての仕事しか評価されない恐れが有ります。そうなると、「お前はIT土方として有能だから、ずっとこのままIT土方として仕事よろしく」と評されてしまい、結果IT土方からの脱出がしずらくなってしまう事が想像されます(特に人売りしかしていない会社等は、これに該当する可能性高)。

組織外の人とのつながりを作り、自分の努力を認めてもらえる土壌を作るか、いっそ転職を考えた方が良いかもしれません。

■実績を積み上げる方向が「IT土方のプロフェッショナル」に向かってしまっている
これは「人間「システム監視マシーン」からの脱出」に書いた上司が良い例で、「複数のコンソールの間を反復横跳びをするように移動しながらメンテナンスのコマンドを打ち込む」等の職人芸が該当します。自分自身が個人で担当している領域だけを見て実績を積み上げて行っても、それはIT土方としての成果でしか有りませんので、内容が評価されたとしても、IT土方からの脱出は困難と考えられます。

以上、3つほどパターンを出しましたが、この中でも3つ目にハマってしまうのが一番まずいと思うのです。このパターンでIT土方として先鋭化してしまうと、「人間「システム監視マシーン」からの脱出」に書いた上司のように、他のやり方で仕事を進める事が認めがたくなってしまうのではないでしょうか。

なぜなら、単純作業の先鋭化で成果を出すには限界が有り、その事実に本人が潜在的に気付いていたとしても、他のやり方で仕事の成果が出てしまうと、自分が積み上げて来た努力の価値が毀損されてしまう事に成りかねないため、自分の仕事のやり方以外は認めがたくなってしまうものと考えられます。


■King of IT土方

このようなマインドで周りのスタッフまで巻き込んでしまうと、おそらくその組織の成長は、単純作業の先鋭化で成果を上げられるところで頭打ちでしょう。自分は、これらの原因と成ってしまうような人に「King of IT土方」の称号を授与したく思います。

上記の例は、実はIT土方に限らず、技術革新等で今までの仕事の仕方が通用しなくなった時にも起き得る事だと思います。そこで、今までのやり方に固執するか、新しいやり方にチャレンジするかで、その後の人生が大きく変わってくる可能性がある事を、自戒の念を込めてここに書き残します。

この投稿内容が「IT土方」からの脱出の一助となる事を願っています。

ちなみに「長時間労働」については、個人的にIT業界にいる限り避けられないと考えています。平常時では定時退社OKな会社でも、プロジェクトの山場前後1ヶ月とか、甚大な影響を及ぼすようなシステム障害の発生時等は、IT土方に限らず、下手をするとその企業の社長やっている人でも徹夜等は普通に有る世界です。
なので、残業や徹夜は絶対嫌だと言う人には、IT業界はおすすめ出来ません・・・


ここまでご覧頂き、有り難うございます。
当エントリを含め、これまでの転職履歴で得た経験から、仕事に向かい合う為に必要なテクニックや、メンタリティ・思いを抽出し、「お仕事サバイバル」のページにまとめました。
また、「お仕事サバイバル」のネタ元となる、就職からアラフォーの現在に至るまでの8回に渡る転職履歴について、「転職履歴」のページにまとめています。 
それぞれ、あわせてご覧頂けますと幸いです。

1 件のコメント :

  1. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

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