しかし実態はIT土方

さて、前回洒落にならないくらい人手が足りない状態」の現場に出向するまでのお話をしましたが、実際その職場に入ってみると、これがもうすごい状態でした。

出向先のネット金融業者は当時社員役50名、うちシステムに関わる社員は10名前後で、業務内容から10名でも厳しそうなのに、自分が配属されたインフラ部門は主担当となる社員が1名しかいない状態(!)で、人手が足らない時は、他の開発担当社員がスポットで手伝いをするような状態で運用されていました。
繰り返しになりますが、ネットでのサービスですから、原則は24時間アクセス可能な状態でサービスしているにも関わらず、主担当の社員は一人しかいないのです。

その担当の方は殆ど家に帰れないような状態で仕事をしていたのですが、自他ともにその方自身がその会社のサービスを維持する為に身を尽くして貢献していると認められ、それを原動力として過酷な環境下でも非常にアグレッシブに仕事をこなしていました。
しかし、出向する先がそんな状態であるなんて事をかけらも知らずに現場にはいった自分にとって、先に書いたような環境を受け入れられるまでには、かなりの時間を要しました・・・いや、結局最後まで受け入れられなかったのかもしれません。

真っ先につまずいたのが、それまで自分が培った技術的な経験が、ほぼ糞の役にも立たなかった事でした。
これまでの経験で、開発からインフラ構築まで一通り経験してきましたが、案件の規模としては同時にシステムを利用するユーザーが数十人から多くても1000人にも満たない程度でした。しかし今回の出向先のシステムはネット経由でお客様にサービスを提供するシステムであり、お取引の申し込みをした人は全員アクセスして来てもおかしくないんですね。当時現場に入った際には、まだお取引を申し込みされた方は1万人に満たない程度でした(その職場を離れる時には数十万人までいってました)が、それでもそれまでの経験からみると突出したデカさだったわけです。

システム全体のデカさは、それまで自分が培って来た技術的なノウハウや勘所がほぼ通用しないくらいのインパクトでした。

例えば、MCPOracle Masterが自動車の免許のようなものだったとすると、今までの自分が担当した案件の規模だと、せいぜいその免許で自家用車を不自由に扱えればノープロブレブだったところが、出向先ではいきなりレーシングカー並みの取り扱いをしないと車がまともに走らないと言えば伝わるでしょうか。
自家用車もレーシングカーも、エンジンとタイヤ、ボディーがあり、それらをコントロールする為にハンドル、トランスミッション、アクセル、ブレーキがあるところまでは共通ですが、じゃあ自家用車が運転出来ればレーシングカーを好タイムで走らせられるかというとそうは問屋が卸さないのと同じ状態に陥ったという事です。

特に自分は求人時のカタログスペックが良く評価されたらしく、実際に来てみたらこんなもんか的な落差が多々あったようで、おかげさまで出向後しばらくの間は役立たずの丁稚状態の扱いとなり、少なからずあった技術者としてのプライドも木っ端みじんになったのでした・・・

また、サービスが金融関連であることから、トラブル一発で下手をするととんでもない金額の損失が生じる可能性が当たり前のようにある状況下であるがために、良くいえばトラブル対応を含め全ての作業を短時間にこなす事が是とされ、悪くいえば場当たり的な対応でも何でも良いから、とにかく目の前にある問題を潰せというスタンスでした。

こんな状態で、一人しかいないインフラ担当社員の配下に入り、サーバコンソールの前に張り付いて、何かしら問題があったら即アプリケーションの強制終了と再起動を繰り返すという仕事が1年近く続いたのでした。

今考えれば、インフラ担当の社員も、インフラの運用や増強・トラブル対応を一人で全てを抱えて突っ走っているような状態だった為、やむを得なかったんだろうとは思いつつ、求められるものが「役に立たない技術的な能書きはいいから、1秒でも早くサービス停止コマンドを叩けるよう鍛錬してくれ」という内容であり、「それって「運用オペレータに毛が生えたような仕事ですやん」と喉まで出かかりましたが言い出せるわけも無く、もやもやとした気持ちを抱いたまま仕事に取り組まざる得ませんでした。

心の中では「こんな仕事今すぐにでも辞めてやる!」と思う反面、前職も1年経たずに転職したあげくこの職場からもまたすぐに移ってしまうのはさすがにまずいだろという思いもあり、またちょっとでもトラブルが起きると終電コース確定という仕事の忙しさもあって、何とかぎりぎりのところでその職場に踏みとどまっていたのでした。

しかし、1年をすぎたあたりでこのような状況に変化がおとずれたのでした。それはまた次回の投稿で。


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