ニートから就職へのきっかけ → 惚れた娘に「働け!」といわれてゲーム会社へ

今の自分がIT企業でスーツを着て真っ当な仕事をしているとは、当時の自分では想像もつきませんでした。

いわゆるコンピュータとの関わりは、当時スーパーマリオで大ブレークしていたファミコンと、自営業の親が契約管理用に買ったPC9801VM2で、使いこなせなかった親の代わりに契約書文面の清書をしていたくらいで、自分としては将来何をして食っていったら良いのか、全く想像がつきませんでした。

勉強は大嫌いで大学進学なんかはかけらも考えず、ただ高校を卒業してからいきなり就職するのも嫌で、何もやりたい事が無いのに試験の無い専門学校に大枚叩いてもらって入学したあげく、バイトに明け暮れ殆ど学校に行かず、入学費や授業料約200万をどぶに捨てた形となりました。
そんな自分を親はグーパンチで出迎え、翌年から奥歯がかけたニートになったのでした・・・

さて、ニートになった自分は、かろうじて実家に居候をさせてもらっていたものの、(当たり前ですが)自分の自由になるお金は自分で稼がねばならず、割の良いバイトを探す必要が出てきました。

高校時代もコンビニ店員や運送業の助手等をおもしろおかしくやっていたのですが、多少なりともPC(DOS)と一太郎の経験があった事から、めでたく企業向けリースアップや中古のPC9801を再販売する会社に、リースアップPCの掃除と稼働テスト要員として、アルバイト採用で入り込む事が出来ました。

こう書くと、「あーそのままその会社に就職したんでしょ?」と思う人もいるかもしれませんが・・・
実はこの職場で、社員で働いていた女の子を好きになってしまったのが、単に就職というレベルではなく、その後の自分の仕事人生の方向性を決める大きなきっかけになったのでした。


自分の好きになった女の子は、社員で事務仕事をしつつ、大手ゲームソフト会社の下請けソフトハウスで、キャラクターデザイナー(今で言うドット絵師)の請負仕事をしていたのでした。
何度かその子にアタックしたところ、「下請けソフトハウスを紹介してあげるから、そこで真っ当に仕事したら付き合ってあげる」というではありませんか。
どうもフリーターでふらふらしているのが嫌だったようです。
人間惚れるが負けと言いますが、当時の自分はその女の子の愛を勝ち取りたい一心で、それまで「将来何して喰ってこーかな」くらいに思っていたのが、あっという間に「自分の作ったゲームで一山当てて、その子と幸せな人生を送るんだ」くらいの大いなる勘違いをしながら突っ走り始めたのでした。
技術的には、多少MS-DOSのコマンドを知っていたのと、一太郎で文書編集が出来るくらいで、プログラミングについては「そういえば、ファミリーベーシックってのがあったよね」くらいの知識しかありませんでした。
そんな状態で下請けソフトハウスに遊びにいったところ、[はじめて読むMASM]という本とアセンブラの開発環境が一式入った5インチFDを手渡され、「これ読んで、ある程度プログラムが読み書き出来るようになったらおいで」と色よい返事。
本を手渡されてから3ヶ月、自宅のPC9801VM2を占有し、何とか基本的なアセンブラでの開発手順やレジスタとメモリ、セグメント等の概念を習得し、めでたく入社を果たしたのでした。
元々機械いじりは好きな方で、高校の頃は乗ってたバイクで転んでも修理代をケチって部品だけ取り寄せ、暴走族上がりの先輩に工具を借りながら自分で修理したりしてましたが、まさか女の子に惚れたのがきっかけでプログラマの道を歩み始めるなど、夢にも思いませんでした。
あの時、その女の子に惚れていなかったら、また惚れたとしても、仕事の紹介なしであっさり振られてたら、今頃自分は何をしてたでしょうか...