人事考課の不満 - 給料・昇進の決められ方

■頑張ったのに評価が思ったより低いのは何故?

先日、所属部署のスタッフから人事考課に不満があるとの相談を受けました。
そのスタッフは、昨年半ばに「2度目のリストラ、そして40代を前にして」に書いてある、リストラで退社した人員の補充要員としてうちの部署に異動になり、その後非常にがんばってくれました。

当然、年度末の考課の際には、本人のがんばりに報いる評価をつけたのですが、うちの会社では最終的な判断が本部長の手にゆだねられており、残念ながら、結果として様々な要因から自分の評価が全面的には反映されなかった様です。

人事考課の仕組み自体は、会社それぞれに色があるものの、共通点も多いと思いますので、上記の出来事を元に人事考課について考えてみます。

完全年棒制となっている外資系等の企業や、新卒採用者がいきなり子会社社長になってしまうような、エッジの尖った人事を行っているベンチャー等の会社は、共通点がひとつもないかもしれませんのでご容赦下さい...


■スタッフ(除管理職)の人事考課は相対評価+運

これまでの個人的な経験から、人事考課は本部または部署内のスタッフ内で相対的に評価されることが多いのではないかと考えています。例えば、誰がどう見てもaさんより業務遂行能力が低い他部署のbさんの方が給料が良い、なんていう話は普通に聞いたりしませんか?

何故このようなことが起きるかというと、会社全体の業績から、取締役会や人事部を通して昇格者や昇級者の予算枠が各部署に割当てられ、部署内での采配は予算内での調整に範囲が限られる事が多いからです。
各部署の予算枠は実績や次年度の計画に基づき策定される為、端的に言うと、業績向上に貢献したと判断されるようないけてる部署や、社内でこれから力をかけて行く部署であれば、人事予算枠は広げられ、その逆であれば予算枠は絞られる訳です。

なので、aさんがどんなに個人で頑張ったとしても、aさんの所属部署がいけてなかったり、社内の戦略上、重点が置かれていなかったりすると、何故か他部署で仕事してない人の方が給与が上がってしまうという切ない結果になってしまうのです。

年功給与が残っているような会社のベースアップ分は除外していますが、そのような会社でも、職能給の査定は類似する事項が多いのではないかと。


■「公平な評価」など無いと思った方が良い

部署内の予算枠の割り振りは、一般的に担当役員か本部長・部長クラスが担当する事が多いのではないでしょうか。スタッフの評価は定性面・定量面、および勤怠状況などをA/B/C/D/Eの五段階で為され、予め準備されている給与テーブルや職階テーブルと突合して処遇が確定すると考えられますが、AやEの評価は、万人が認めるようなすばらしい/劣悪な評価でなければ付けてはいけないと、お達しが出される事が多いです。
例えばaさんが鼻血が出るほど頑張ったと思っていても、同じ内容を同じ部署内でかつ職階も比較的近いbさんが類似内容を楽々こなしてれば、aさん自身の業務遂行能力の向上幅が他のスタッフに比べ絶対的に高かったとしても、A評価は付けられません。

また、評価には以下のような様々なバイアスがかかる事も認識しておいた方が良いでしょう。

1.部門戦略のバイアス
定性面・定量面、および勤怠状況といった一般的な物差しだけではなく、日常的な業務への取り組みからポテンシャルを感じるようなスタッフには、意図的に高評価を行う場合があります。
また、部署内のメンタリティや雰囲気を考慮し、意図的に評価調整が行われる事もあります。

2.評価者の属人性によるバイアス
評価者も人間ですから、どんなに幹部研修等で人事考課に関する教育を受けていたとしても、感情に左右される面は否めません。
評価者との人間関係が良くなければ、どんなに業績が良くても過小評価されてしまう可能性があります。
同様に、直近の出来事にも左右される可能性もあり、期初で仕事がうまくいかなくても考課時期が近い期末でうまく進んでいれば、評価者は期初の状況を過小評価する可能性が有り、またその逆も然りです。

3.その他のバイアス
縁故等、会社と特別な関係をもつ採用者の評価が、意図的に底上げされる等の可能性があります。また、会社によっては、学閥など業務外のコミュニティが影響を及ぼすこともあるでしょう。

また最近では、評価に基づき連動していた役職と給与テーブルを切り離す会社が増えていると聞きます。導入している会社では、例えば仕事では会社に貢献しているが予算枠が不足している際に「役職は上げるが給与は変更なし」、逆に「役職の変更はないが昇級は実施する」など、その時の会社や部署の状態に応じて使い分けが行われます。


■納得が行かなければ、人事部門や人事考課を担当す管理職に相談をするしかない

ちなみに、冒頭で書いたスタッフが不満に思うような人事考課結果しか出せなかった理由は、移動前の部署の人事評価を行う部長との折り合いが非常に悪かった様で、通期で見た時に移動前の部署内での評価が非常に低く、これが足を引っ張った為でした。

その経緯を、当たりのない範囲でスタッフにフィードバックの上、「次の1年頑張れば、現在の所属部署での評価のみが対象となるので、少なくとも現状の仕事っぷりが継続していれば、1年後には不満の無い数字が出るよ」と話したところ、そのスタッフから「分かりました、あと1年は我慢しますが、来年の人事考課で同じような評価が為されるのであれば、さくっと転職しますから!」と釘を刺されてしまいました。

もしこの文書をお読みの方が、上記のスタッフと同様に人事考課に不満があれば、まずは自分の実績の他に、先に上げた以下の項目を冷静に考えて下さい。
  • 社内での所属部署のポジションや業績・評価
  • 自分自身の部署内でのポジション
  • 評価者との人間関係
これらの要因を考えて、それでもまだ不満があれば、人事部門や考課を行う評価者に相談するしかありません

え、お前は不満無いのかって?自分は「2度目のリストラ、そして40代を前にして」に書いてあるように、一律5%の給与カット食らって泣いてますよ...一律なので相談も何もないです...

ちなみに人事考課の権限を持たない課長等と相談しても、あまり意味があるとは思えません。何故なら、評価者からみると、人事考課の権限を持たない課長等も、また一人の評価対象者にしか過ぎない為であり、不服を持つスタッフに十分なフィードバックが出来る情報・能力を持ち得ていないケースが多いと考えられるからです。
お話をするのであれば、愚痴程度に留めておくのが無難だと思います。


■逆手に取って自分をアピールする

また、来期の考課を少しでも良くしたいと考えるのであれば、先に上げた考慮事項を先読みして動くのも良いでしょう。

例えば期初は仕事の手を抜いても、期末にきっちり片付ければ、定性面・定量面、および勤怠状況などの評価事項に対し、常に目を血走らして仕事をする必要は無くなります。
またスケジュールやタスクを自らコントロールする立場にいる方は、自分の見せ場となるタスクを意図的に人事考課時期のちょっと手前当たりに持ってくるいうような小技も考えられます

部下をよーく見ている上司はごまかせませんので、悪しからず。

それはずる賢いだけだろと思われる方もいるかもしれませんが、そこは自分自身をプレゼンする為の手段のひとつと割り切ってしまっても、お客さんや上司、同僚等に迷惑さえ掛けなければ、バチは当たらないと思いますよ。


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